認知症新薬「レカネマブ」で認知症治療は変わるのか!?

予防医療

病院で働いていると認知症の患者さんと接する機会が多くあります。認知症の方ががん治療を行っていくには、家族の支えが必須となり、協力が得られなければ治療の手段はいくらでもあるのに治療が前に進めないと言うことがあります。症状を緩和してあげたくても飲み方が難しい薬は選択できないなどの悩みも薬剤師ならではの経験としてあります。

レカネマブとはどんな薬?

従来、国内で使用可能な認知症の薬はどれも「進行をなだらかにする」ことを目的とした薬剤ばかりでした。先日製薬会社エーザイが認知症治療薬「レカネマブ」と言う新薬の発表をしました。

「レカネマブ」は抗体医薬という種類の薬で、脳内でアルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドベータ」にくっついて除去する働きにより認知症の「進行を抑制する」効果があると言われています。従来の飲み薬とは異なり、注射薬というのも特徴の一つです。

認知症治療一歩前進も道のりまだ長し

臨床試験ではアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症を対象にしており、同様の患者において治療を開始する必要があるとしています。つまり重症化している患者さんへの効果は不明です。認知症を早期発見するのはなかなか難しいので、医療機関に行かずとも家庭でできる判定基準なども受ける必要もあると思います。

また治療費の面でも課題があります。エーザイはレカネマブの発売価格を平均的な体重75kgの患者の場合、年間2万6500ドルに設定しました。為替レートを1ドル130円とすると、日本円では344万5000円となります。日本国内で認知症の患者さんは2025年には700万人を突破すると言われています。日本の医療費とのバランスを考えると全員が平等に治療を受けられるのは現状現実的ではありません。

安易に製薬会社の新薬のニュースに飛びつくのではなく、必要な患者に適切な治療薬を届け、安全に使用していただくことが、我々医療従事者の役割になっていくのではないかと思います。

道のりはまだ長いですが、大きな一歩を生かしていくためにこれからも議論を続けていきましょう。

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