東京・国分寺市のクリニックの医師と薬局の薬剤師が、必要な量の100倍にあたるモルヒネを誤って処方し患者の男性を死亡させたとして書類送検されました。
クリニックの医師らは去年2月、都内の当時93歳の男性患者に対し、必要な量の100倍にあたる鎮痛剤・モルヒネの粉薬を誤って処方し、1週間後に死亡させた疑いがもたれています。
警視庁によりますと、93歳の男性が息苦しさを訴えてクリニックで診察を受けたところ、医師が電子カルテの入力を誤り、薬局の薬剤師が処方箋に従い薬の調剤を行ったということです。 警視庁の任意の事情聴取に対し、2人は容疑を認めているということです。
麻薬の調剤について
昨日ネットのニュースを見て、今日職場の医師や看護師さん「こんなミスあるの」と聞かれました。ニュースを見た方、医療現場で働く人間でもこんなミスありえないでしょ。と思う方がほとんどですが、どんなことでも絶対はあり得ません。
医療用麻薬は主にがんの患者さんの痛みを取るために使います。一般的な薬と違い患者さんの痛みに合わせて投与量が決まるため上限を設けられていません。ですのでモルヒネ3mg投与する方もいれば30mg、30mg投与される方もいるのです。今回のような100倍の違いがどういったシチュエーションなのか詳細は報道からは読み取れません。
薬剤師ができること
私たち薬剤師をはじめ医療従事者ができることと言えば、患者さんとコミュニケーション(言語、表情など手段は様々)、医療従事者同士の連携。つまりは患者さんを中心としたチーム医療の質を上げることだと感じています。
薬剤師が医師へアプローチできる手段として疑義照会というものがあります。これは医師が処方した薬が患者さんに適切かどうかを確認し、問題があれば問い合わせるという行為です。今回の事例に関して処方だけを見ればもしかしたら全く間違えとは言い切れないのかもしれません。しかし90代と高齢であることなど患者さんの状態を見れば処方された量が不適切かもしれないと疑問に思うことができたかもしれません。
もし医師と薬剤師が普段から連携の取れる間柄であれば防げたかもしれません。
使い方さえ間違えなければ患者さんの症状を和らげてくれるモルヒネが患者さんの命を奪い、また世の中に悪い印象をあたえてしまったことが残念でなりません。
デジタルの力と人間が力を合わして発揮するチームの力。補い合いながら患者さんの生活の質を上げるより良いものを提供していきたいと願うばかりです。
モルヒネ依存とオピオイド受容体の関係
なぜ、医療用麻薬を痛みがある状態で使用しても、中毒にならないのでしょうか?
モルヒネは、身体の中に入ると「オピオイド受容体」に作用して、効果を発揮します。
オピオイド受容体には、μ、δ、κの3種類があり、相互に影響していますが、とくに「κ受容体」には、μ、δ受容体を抑制することで、精神・身体依存形成を抑える作用があります(図1)。痛みのある状態では、内因性のκオピオイド神経系が亢進することで、μ、δ受容体に作用して、鎮痛作用が促進し、精神・身体依存形成も抑制されます。一方、痛みのない状態では、内因性のオピオイド受容体がはたらかないため、精神・身体依存を形成する場合があります。
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