国内の認知症患者もしくは認知症予備軍(MCI)の方は増え続けており、その数は2025年以降約600万人に到達すると言われています。認知症の方の治療や介護の比重は非常に大きく、支えていく側の人材不足も懸念されています。認知症は国の将来のためにも放置していいはずがなく、今回のニュースが認知症についてみなさんで考えるきっかけになればと思っています。
レカネマブと既存の認知症治療薬との違い?
レカネマブってそもそもどんな薬?
従来、国内で使用可能な認知症の薬は上図の通りどれも「進行をなだらかにする」ことを目的とした薬剤ばかりでした。
今回国内で承認を受けた認知症治療薬「レカネマブ」は抗体医薬品という種類の薬で、脳内でアルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドベータ」にくっついて除去する働きにより認知症の「進行を抑制する」効果があると言われています。従来の飲み薬とは異なり、注射薬というのも特徴の一つです。
アルツハイマー型認知症のメカニズム
アルツハイマー型の認知症は進行性の病気で、認知症の約7割を占める。神経細胞を壊す異常なたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」が脳内にたまり、神経細胞が徐々に死滅して思考や記憶の機能が損なわれると考えられています。
レカネマブは、体内の免疫反応を利用してAβを取り除いて病気の進行を遅らせる効果が期待されています。ただ、壊れた神経細胞は修復できないので、根治薬ではありません。
アルツハイマー型認知症の原因は2種類、考えられています。
従来の薬
現在使われているアルツハイマー病の薬には、患者さんの脳の中で弱った神経細胞の働きを補う薬(コリンエステラーゼ阻害薬)や、神経細胞が死んでしまうのを遅らせる薬(NMDA受容体阻害薬)があります(上図)。これらはいずれも、症状を一時的に和らげることを目的とする「対症療法」と呼ばれ、アルツハイマー病の発症や進行を止めることはできません。
レカネマブとの比較
それに対して、レカネマブはアルツハイマー病の原因と考えられる老人斑を、脳から取り除くことを目的として開発された薬です。そのため、レカネマブは、アルツハイマー病の原因に働きかけて進行を抑える薬となります。これは、これまでにはなかった、新しいタイプのアルツハイマー病の薬です。
治療に関する課題
臨床試験ではアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症を対象にしており、同様の患者において治療を開始する必要があるとしています。つまり重症化している患者さんへの効果は不明です。認知症を早期発見するのはなかなか難しいので、医療機関に行かずとも家庭でできる判定基準なども受ける必要もあると思います。
また治療費の面でも課題があります。エーザイはレカネマブの発売価格を平均的な体重75kgの患者の場合、年間2万6500ドルに設定しました。為替レートを1ドル130円とすると、日本円では344万5000円となります。日本国内で認知症の患者さんは2025年には700万人を突破すると言われています。日本の医療費とのバランスを考えると全員が平等に治療を受けられるのは現状現実的ではありません。
以上を鑑みても、認知症は治療の進歩とともにますます予防や早期発見が重要になってくると考えられます。
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